グルジア軍が警察にカモフラージュ?

軍用品ネタではないのですが、なんとなしにWikipediaを読んでいて気が付いた事があったので今回はソレをネタにしようと思います。

「ジョージアとロシアの関係」というページがあるのですが、「8月戦争の影響」という項に

「現地情報によれば、南オセチアとジョージアの境界には軍の車両が配備されているものの、ジョージアとしては「国内の治安問題」にしておきたいため、表だっては軍であることを明示せず、警察車両であるかのようにカモフラージュすることもおこなわれている。」

という記述があります。

出典によると池上明さんの「「1テーマ5分」でわかる世界のニュースの基礎知識」p55-60に記載してある内容だそうです。

結論から言えば実際にグルジア軍が警察に偽ってグルジア、南オセチアの境界に展開しているわけではありません。

グルジアにとっては国内問題であるという事実は変わりませんので、それに伴う対処である事は事実なのですが、軍ではなく内務省SOC所属の警察権を持つSpecial Tasks Deparment (STD)という組織が担当しているんです。

※日本のように警察組織が警視庁等の1つの組織の傘下に収まっておらず、各組織が内務省の下に別々に存在している国家は多々あります。

例えばグルジアはパトロール警察とセキュリティ警察、中央刑事警察などは別々に内務省の傘下に収まっています。


STDは領土の保全等が任務に含まれていますので軍事作戦にも動員する事が出来、また地元警察が対処しきれない重犯罪の際には警察の支援のために出動する組織でもあります。

イメージとしては軍事的な作戦も行えるSWATのようなものでしょうか。

グルジアからしても国際社会からしても南オセチアとアブハジアはグルジアの国内問題に該当しますし、国境警備隊では力不足であってもSTDならある程度の軍事力は持っているので非承認国の境に配置するなら好都合と考えられているのでしょう。

もちろん軍もパトロール等を行っているようですが、やはり警察権がありませんから、この手の任務にはさおさらSTDが向いているわけですね。

※「პოლიცია」はグルジア語で警察という意味です。

次に、このような準軍事組織は国内に問題を抱えている国家では珍しくありません。

また、ソ連からの独立国家である旧ソ連構成国はおおむねどの国もある程度軍事力を抱えた準軍事組織を持っている傾向にあります。

警察が装甲車を持っているという事は世界的に見れば大して珍しくないんですね。

ロシア=グルジア戦争時に、ツヒィンバリ攻略の主力を務めた1つがSTD含む内務省の準軍事組織です。

特に陸軍がツヒィンバリを包囲するように動き、市街地への突入は軍に支援された内務省が行ったため、よく写真や動画が残っています。その分上記のような誤解もたくさんあるわけですね。

池上さんの書籍を手元に持っていないのでなんとも言えないのですが、そういった誤解が伝染したソースを参考にしたのかもしれません。

といっても、警察に偽装した軍隊なんてちょっと間抜けがすぎますし、「国内の治安問題にしておきたい...」というのもやや違和感を感じてしまいます。

グルジアは大きな過ちを度々犯してしまったという事は事実ではあるのですが、こういった推測から飛躍したであろうネタで批判されるのは、ちょっと忍びないですね。

今回はそんなこんなで取り上げた記事でした。





”ぐるじあん”のグルジア趣味日記

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